9.25.2011

言葉が通じない楽しさ

コミュニケーションを図る上で重要な道具である言語。これがないと、パンをひとつ買うこともトイレの場所を聞くことも難しくなってしまうが、無ければ無いでなんとかなってしまう。当然、震災の話や日本の長所について説明することはできないが、人とつながるという事は決して言葉だけにはとどまらないだろうと思う。誰がそう決めたのかは知らないが、世界の共通語とされる英語は僕もサエも一応持ち合わせている。でもこれまで訪れた国々は、それだけではどうにもならない事の方が多い。アイスランド北部の魚市場、モスクワ駅構内のロッカー付近、ウランバートル行の寝台車両の中、キルギスの閉鎖された国境。何が起こっているのか、どうすればいいのかがわからない時はどこにもある。


旅を続けていると、その土地が初めて訪れた場所であっても、よく見ていればそこでのルールや立ち回り方が何となく見えてくる。言葉が通じなくても公共交通機関の使用方法や、ものを買う時に何を聞かれているかはなんとなく想像できる。でも当然のように失敗もある。どこで聞いた話だろう。ある日本人男性がドイツのバーでトイレに行こうとした。二つある扉に書いてある文字を読んでどちらへはいるのが正しいのかを決めようとし、声に出して一つ目を読んだ。Herren… 入えれんのならもう一つの方、とそちらを読むと、Damen… さて、どっちへ入ろう...


パリに到着してから、僕の毎朝の日課は焼きたてのクロワッサンを買いに行く事。妹と甥が来仏している事もあり、この日はいつもより多めに買う事になった。"Bonjour, madam. Seize croissants, si'l vous plait."。 高校の時にかじったフランス語で自信満々にそう伝えると、店員のお姉さんが少し驚いた様子で聞き返す。"Seize?" "Oui"。 すると彼女は大きな紙袋を取り出し、これでもかとクロワッサンを詰め始める。あれ、2袋目?いやいやseizeだよ、と指で示すと"ahh, six..." と口元でため息をついて袋からクロワッサンを棚へ戻し始める。...そういえばセィスはスペイン語の6だ。スィースが6でセィズが16ね、ぱーどん、ぱーどん。自分の中で言い訳をまとめ、頭を低くしながら店を出たのでした。

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