9.08.2011

バルーン・ファイト

カッパドキアのハブ・ターミナル、ネヴシェヒルに着いたのは朝6時。「着いたよ」と見知らぬ人に起こされ、寝ぼけながら言われるがままにバスを下車し、そのまま建物の中に案内される。気がつくと、パッケージツアーの勧誘。あーここでもしつこい押し売りかぁ…とがっかり。眠い目をこすりながら何度も断り、ギョレメ行のバスを待つ。
 




宿泊したShoe String Hostel
ギョレメはとがった岩が連なる不思議な景観の中に存在する小さな町。その昔、火山の噴火によって積もった火山灰が地層となり、雨風で崩れなかった固い部分が現在の奇怪岩として残っている。そこに住み着いた人々は空洞を利用して洞窟を作り、今でも一部が住居として使われている。謎に包まれているカイマルクの地下都市は、使用目的や発症の時期が不明だが一時期は難を逃れる為に多くのキリスト教信者が生活していたと言われている。 ミニバスを降り立つと最初に見えたのが空を泳ぐ無数の気球。そして、尖った歯のような岩の間に建てられた石造りの家々。朝のせいだろうか、静けさが少し肌寒い空気と共にゆっくりと街を包んでいる。そんな心地よい雰囲気に浸りながら宿を探してみる。ギョレメでは洞窟宿に泊まりたいというサエの希望どおりの部屋が見つかり、少し休んでから町を散策。世界遺産として多くの観光客が訪れるこの地では多くのカフェや土産物屋が道端に肩を並べているが、イスタンブールのような品のない呼び込みはない。やはりトルコの人々の優しさは都市を離れてみないとわからない。




サエにはもうひとつの希望があった。それは、上空500メートルの高さから地上すれすれまで、風の力に任せて空を遊泳する気球に乗ってみる事。ここギョレメには十数もの気球会社があり、空から奇怪岩を眺めるのはひとつの名物になっている。試してみたい気はあったが、高所が苦手な僕は地上からサエを見守る事にした。





熱気球は朝が早い。冷え込んだ朝5時に送迎車が来るとサエを送り出し、僕は一番高い場所から見物することにした。まだ暗い路地を迷い、闇に吠える野良犬たちを遠目に高台へ上がってみると、平地に無数の気球がキノコのように膨らみ始めているのが見える。気の早い気球がひとつだけ飛び立っていたが、地上の風船たちは夜明けを待つかのごとく、徐々にその大きな頭を擡げつつある。そのうちのひとつがゆっくりと動き始め、ふたつ目、みっつ目とタンポポの綿毛の様に飛び立っていく。気づくと空には気球のシルエットが広がり、まるで薄明かりの平面に穴が空いているかの様な錯覚をおこす。ようやく山の向こうから差し始めた朝日を浴び、風船たちはカラフルに輝きながら町を越えて西へと流れていき、やがて丘へ降りていった。


真ん中がサエの乗っている気球


久々に日の出を見てから一日が始まった。ちなみにこの日の夕日は、サエと同じ高度から眺めることができた。


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