6.23.2011

自由と平和の象徴、クリスチャニア

舗装されていない 細道を入り、しばらく進んでいくと行儀よく列をなして行き交う自転車が見えなくなり、低く唸る自動車の音が聞こえなくなった。通り過ぎる人が微笑み、ネコが気持ち良さそうに広場の真ん中で寝ている。



クリスチャニア(正式名称:Freetown of Christiania)とは、コペンハーゲン市内の中心にある理想郷。17世紀から軍の基地として使用され、核兵器や武器に汚染されて買い手のつかなかった土地を1960年代後半に若者たちが無償で政府から引き取り、自由なコミュニティを作ることにした。そこでは、その地域だけの法を作ることが認められ、当時のヒッピーが求めていた平和と自由を掲げ、多くの若者が自分達の家と生活を建て、食物と子供たちを育てた。国王クリスチャン4世に由来する名称は、軍事基地に付けられた土地名が引き継がれたものであり、赤地の旗に描かれた黄色い丸は3つの「i」の点の部分を示している。







個人の所有物が存在しないこの地域には生活者に平等の権利が与えられ、政府や有権者は存在しない。完全な民主主義で物事は決められるが、平和を維持するため3つだけルールがある。no hard drugs (薬品系の麻薬禁止)、no violence(暴力禁止)、そして no cars(自動車禁止)。現在この地で生活する約500の住民、アーティストだったり、発明家だったり、中にはクリスチャニアの外に仕事を持つものもいるらしい。現在は厳しく取り締まられるようになったが、大麻が売られていた当時の面影が中心地に強く残っており、デリやカフェ、バーなどにはその雰囲気を楽しむ地元の若者や観光客などが大勢集まってくる。僕たちは地元の人に案内してもらったのだが、オススメはガイドブックに載っているこの中心地よりも、湖を囲うように続くハイキング・トレイルのような細道。30分程のこの道を歩くと、ここの人たちがどの様な生活をしているのかを垣間見ることができる。


実は、このユートピアについて悲しい話がある。1ヶ月ほど前にあたる2011年の5月に、デンマーク政府がクリスチャニアに対して起こした訴訟の判決が下された。このコペンハーゲン一等地を国へ返還するかクリスチャニアが買い取るべきだという内容らしいが、国の勝訴で決着がつき、今後このコミューンの行方は不透明らしいのである。多くの国民から認められ、中には国の誇りだと言う人もいるクリスチャニア。この自由と平和の象徴を、現在のままでいつまでも残しておいてほしいと願うとともに、変わってしまう前に一人でも多くに体験してほしいと思う。


ちなみに訪れたいと考えている方、写真撮影が禁止の区域があるのでご注意を。

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