町を少し歩いたりランチを食べたりしながら、今回の撮影について聞いてみると、とにかく大変らしい。言葉の壁は当然大きな問題らしいが、元々フィンランド人というのはお喋りな方ではなく、特に男性陣は気を使ったり説明したりという行為が一切無いので、なんの為に待機しているのか、何時にどこへ行けばいいのかなど情報を得るのが困難らしい。そんな話の途中、「撮影場所は見られないかもしれないけど、私のキャビンに泊まりに来ない?」とジェシカ。思いがけない提案に、サエと顔を見合わせ即答。
彼女が宿泊しているのは、ロヴァニエミから2時間ほど北上した小さな村。クルマの中でも、我々の世界旅の事や彼女の東欧の珍道中など、話は弾む。きっとお互いに会話をする事に飢えていたのだろう。彼女が借りているキャビンはかなりの年代物だが、広くて快適。外にはサウナがあり、仕事が終わると自分で薪をくべて火を起こし、疲れを癒しているそう。フィンランドでは人口の1/3もの数が存在するサウナ。中で身体を洗ったり、冬は凍った湖に穴を開けてサウナと交互に入ったり、とても身近なものらしいのだが我々はまだ体験していなかった。その晩はトナカイの群が見つからなかったらしく、ジェシカも撮影がなかったので、夕飯を作ったり初のサウナを体験したりと静かな時間を過ごし、ゆっくり就寝。
翌日の夕方。ジェシカに連絡があり、トナカイを追い込めそうなので撮影が可能だとの事。また、我々が見にいっても問題ないとの事で、19:00頃に出発。1時間程走って待機場所へ。そこにはキャンピング・キャラバンが何台も停まっており、子供たちが出入りしている。2時間程待機していると泥まみれのバギーにまたがった、皮のジャケットを身に纏った色黒の男性陣が休憩に現れる。今回追い込んだのは100匹ほどと少ないが、これから狭い柵に追い込んで母子の確認をしたり、飼い主の印をつけたりするらしい。
彼らが休憩した後、トナカイを追い込む彼らとともに行動し、森を大回りして群れの背後へ回る。普段はラップランドの広大な大地に放し飼いにされているトナカイはとても臆病で、声や手の動きだけで追い込む事ができる。また、気温が上がると集団行動する習性があるので、人数を増やせば多くの頭数を一気に動かすことができる。そこでこの追い込み作業は、男性陣だけでなく女性や子供たちも一緒になって大勢で行い、徐々に狭い柵へと閉じ込めるというとても原始的な方法で行われる。
これまで見てきたフィンランド、もとい北欧とは全く異なるこの世界。大自然の中で生活する彼らのたくましさから、この環境の厳しさを改めて知ることができた。火山噴火と5月下旬の吹雪からスタートした、1ヶ月半に及ぶ北ヨーロッパ巡りのクライマックスとして、正に相応しい体験だった。
彼女の作品について興味のある方ははここをクリック(英語のみ) |
0 件のコメント:
コメントを投稿